「片付けが苦手」「収納がヘタ」ーそんなお悩みをかかえた奥様たちって、実は多いんです。イエマドが全国の主婦500人にアンケートをとったところ、なんと、4割もの奥様たちに片付けの苦手意識が。そこで本特集では、「美的収納」で有名な草間雅子先生に、家づくりに役立つ「片付けテク」や「収納のイロハ」を伝授していただきました。
構成・文◎鈴木キャッシー裕子
散らかりやすい場所はどこ?
散らかる原因は?
「家の中の散らかりやすい場所は?」(複数回答可)の答えで突出していたのは「リビング」の45%。家族の集まるリビングは、どうしてもモノが集まりやすい=片付かないという展開になりがちです。
また、散らかる原因を自己分析してもらったところ、「モノが多い・捨てられない」「家族が非協力的」「収納が苦手」が上位3位を占める結果に。草間先生は、これをどう解決してくれるでしょうか?
※HP「暮らしの根っこ」会員のうち20~40第の主婦を対象にアンケートを実施
①分類する 7つのジャンルに家中のモノを分けます。このステップを面倒くさがらず徹底的に行うと、あとのステップのスピードがぐんと上がります。
②選別&処分 処分とは必ずしも「捨てる作業」ではありません。「自分の愛しいモノを選ぶ作業」と考えましょう。そして選ばれなかったモノは思い切って処分します。
③収納する 〈その1〉なるべく分散させない せっかく分類した7ジャンル。なるべく分散させずにしまえる場所を検討します。1ジャンルすべてを一ヵ所に…が難しければ、9割方の指定席は決めておき、残り1割の分散はOKです。
④収納する〈その2〉戻しやすいところへ このジャンルのモノは「どこが一番戻しやすいか?」を基本に収納場所を考えます。頑張らずに戻せる場所、家族も片付けやすい場所を選ぶと、自然と次の⑤も実践しやすくなります。
⑤必ず指定席に戻す 最後は日頃の実践編。面倒くさがらずに、決めた指定席に必ず戻すこと。これさえ徹底すれば、美的収納はキープできます。
家の中が散らかっている、あるいは散らかって見える一番の原因は、分類や仕分けがうまくいっていないことなんです。
いろいろなジャンルのモノたちが混在して家の中にあるということは、片付ける「指定席」がしっかりしていないということ。そうなると、当然ですが、使ったものをそこら辺に置いて終わりにしてしまったりして、輪をかけて散らかっていきます。
また、こういう状況だと、我が家には「何が、どのくらいあるのか?」も把握できません。だから、同じようなものを重複して買ってしまったり。そして、さらにモノが増える→もっと片付かなくなる…こんなエンドレスの悪循環にはまり込んでいる奥様たちも多いのでは?
片付けに苦手意識を持っている奥様たちにおすすめしたいのが、私の提唱する「美的収納」のメソッド。メソッドとはいえ、難しいことは何もありません。
まず一番にしてほしいのは、家の中のモノを7つのジャンルに分類することです。「食器」「衣類」といった細かい分類は必要ありません。上図のように「食べる」「着る」など、生活の動作ごとに大きく、ゆるく分類するのがポイントです。
このジャンル分けがきっちりできていないと、不明、不便、不快という3つの「不」が出てきます。
・不明……モノが見つからない、どこにしまっていいかわからない。
・不便……いろいろな「面倒くさい」が発生。モノを出すのが面倒、しまうのが面倒、取りに行くことが面倒、元の場所に戻すのが面倒など。
・不快……モノが整理されていないため使い勝手が悪く、見た目にも気分が良くない。
反対にジャンル分けがしっかりできていると、メリットがいっぱいあります。全体が把握でき、似たようなものをいくつも持っていることが分かるので、余分を減らすことができたり、同じジャンルを一ヵ所に集めることで、スペースが生まれたりもします。
この7つの分類を実行し、モノの混在を解消するだけで家は8割方すっきりとして見えます。だからこそ、ジャンル分けは美的収納の第一歩なのです。
分類が終わったら、上の「美的収納の5ステップ」を参考にしながら、家の中のモノを片付けてみてください。きっと驚くほどモノが少なくなり、さっぱりと整理整頓された状態になることでしょう。
この作業は、これから家づくりを始める人にも有効です。モノが減り、なおかつ自分たちの持ち物の量を把握できるため、どの部屋にどれだけの収納があればいいのかをイメージしやすくなります。
つまり、モノの「指定席」を決めてから収納計画を立てられるということ。むやみやたらに収納をつくるよりも、住みやすい家になるはずです。
「美的収納5ステップ」の一番の注意点は、②の「選別&処分」。処分というと「不要なモノを捨てる」と思いがちですが、「自分の愛しいモノを選ぶ作業」と考えましょう。
たとえばハサミが5つあったら、まず最初に「一番好きなハサミ」を選びます。次に選ぶのは「よく使うハサミ」。最後に「今後使いたいハサミ」を選んで、残りの2つは処分します。
壊れていたり、古かったりといった「本当に不要なモノ」は意外とあっさり選別できるものです。でも、捨てようか捨てまいか迷うモノが目の前に山積みに…。こんな経験はきっと誰にでもありますよね。
これらにきっぱり別れを告げるのが、「大好きなモノ」「使い勝手のいいモノ」の順で選び、残りは処分する方法。これなら思っていたよりもずっとたくさんのモノにサヨナラができ、家の中がすっきり片付くこと、うけ合いです。次からは5ステップの実践例を見てみましょう。
<Before>
右端の棚には本や雑貨、隣の木のラックには寝具、スチールラックにも雑貨。混在ゆえにモノがあふれ返り、収納用品を買い足さないと片付けられない状態になっていた。
<After>
・ハンガーにかけられるもののうちトップス類を
・物陰に隠れほとんど用をなしていなかったポールが、ロング丈の衣類用として復活!
・ブランコハンガーをつくって、ポールを上下2段に
・バッグなどハンガーにかけられないもの
・ニットなどのたたむものは極力減らしてここに
・ラック最下段にポールを増設、ハンガーにかけられるボトムス類だけをここに
・「着る」ジャンル以外のモノはこの棚に収納、横向きにしてスペースを節約
最初に、「ジャンルの混在をなくすと、こんなにスッキリ!」という好例をお見せしましょう。
こちらのお宅のクローゼット、片付け前は各種ジャンルのものが混在し、雑然と置かれていました。クローゼットと言えば本来なら、「着る」モノが収められるべき場所ですが、寝具や本などもここに。
そうした無関係なモノがスペースをとっているために肝心の衣類があふれてしまい、収納用品を買い足し…という本末転倒の状態だったのです。まずはこれを解消すべく、着るモノ以外は別の場所へ運び出しました。
続いてはクローゼット内の整頓です。「ハンガーにかけられる衣類は極力かける」のが、美的収納の鉄則。たたむ衣類は重ねて収納しがちなので、「何が・どこに・いくつ?」が把握しづらくなるーつまり「不明」「不便」が増えてしまいます。
たたむ衣類を少なくするために、ハンガーをかけるスペースを拡張。ブランコハンガーを設置して、ポールを2段使いできるようにしました。また、ボトムス類を吊るすポールと、トップス類を吊るすポールをきっちり区別。
こうした誰が見ても分かる分類と配置にしておくことにより、自然ともとの場所に戻すようになるのです。
もう一つ、美的収納の大切な基本は、モノが「1アクション」で出し入れできる収納です。重なったボックスを一つ一つどけてからでないとしまえない、引き出しの中が多重構造になっている…など、手間や手数が増えるほど、片付けはおっくうになりますよね。極力、ふたや引き出しのない収納用品をそろえるようにしましょう。
<Before>
「片付いて」はいるのに、なぜか美しく見えない状態だった以前。本には白い紙のお手製ブックカバーをかけ、統一感を出す工夫をしていたが、かえって悪目立ちしていた。
<After>
個人のモノは各個室へ戻し、インテリア雑貨のみにまとめ、色味も「白、黒、紺」で統一。
ダイニングルームはたいていの場合リビングと接していて、お客様を通したり、お客様の目につきやすかったりするところ。つまり、家の中でもっとも美しく片付いているべき場所です。
このお宅は決して片付いていないわけではないのですが、やはりいろいろなジャンルのモノが混在し、見た目に気持ちの良くない状態「不快」が発生していました。
このようなケースの一番の解決策は、分類をきちんとした上で「統一感をもたせる」ことです。
ダイニングセット背後の2台のキャビネットには食器やお土産物の人形、雑貨、ゲーム、本などが混在していましたが、背の低い方には食器だけを、隣りの背の高い方には、ご本人が愛しいと思えるモノだけを飾り、「見せる収納」に変えました。
そして統一感を出すために、食器も飾り物も、色が白、黒、紺のモノだけを厳選。美的な空間に早変わりしたのが写真からも分かりますよね。
<Before>
家族全員のモノが集合してしまい、雑然としていた以前のリビング(上)。リビング収納(下)の中も「リビング大好き」なご主人の通勤着がかなりの割合を占める。
<After>
お子様の身の回りのモノだけと割り切ったリビング収納は、この通りすっきり!リビングも一転してお子様のおもちゃのみに。納戸状態だったご主人の自室も、驚くほどモノが少なくなった。
目の届くところで子育てをしたいと、リビングにお子様の服やおもちゃ、絵本などをそろえておくご家庭は多いものです。いかにしてそれを散らかさないようきれいに暮らすかが、「リビング子育て」のカギになります。
ところが、この事例のご家庭は、ご主人が無類のリビング好き!出勤前や帰宅後の着替えもリビングで済ませ、自室で過ごすことがほぼ皆無だったため、どんどんリビングにご主人のモノが増えていきました。反対にご主人の自室はすっかり納戸状態に。
過ごしやすい空間ーつまり、明るく室温が安定していて、人が集うリビングにモノが集まりやすいのは、ごく普通の現象です。けれど、これを放置していたのではリビングは一向に片付きません。
このご家庭には、リビングで着替えても構わないけれど、そのかわり(片付けられないご主人に替わって)奥様が脱いだ服を自室に戻すことをルールにしました。その結果、少しずつご主人の自室への帰属意識が高まり、リビングはお子様のモノだけがすっきりと集まる空間になりました。
無駄に大きいがゆえに雑多にモノが集まってしまっていたクローゼット(上)。その反対側にはご主人の趣味のアイテムがずらり。これではベッドを置くのは無理(下)。
<After>
・左半分が趣味スペースに変身、照明もついたプチ個室状態がうれしい
・棚は可動式のものが鉄則! モノに合わせて段幅が調節できないと不便
・スライド式のポールを増設し、吊るすモノを上下2段に
・クローゼットの半分は本来の「着る」アイテムに ・広すぎた頭上の棚は、入れるモノの量に合わせて高さを縮めて
・可動式の棚も、右に奥様用、左にご主人用と一つずつ新たに設置。吊るさないモノはここへ
収納容量は多ければ多いほどいいと考えている方も多いのでは? でも、「多すぎるとかえって収拾がつかなくなる」という典型的な例がこちら。このご夫妻は「着る」ジャンルのモノが少ないにもかかわらず、寝室には無駄に大きなクローゼットがありました。
空きがあると詰め込みたくなるのが人の性。気がつけば、クローゼットには衣類のほかに寝具、個人の趣味のアイテム、そして防災用品や非常食までもが…。 結果としてモノがあふれ、寝室にベッドが置けなくなっていたのです。
7つの分類をしてみると、衣類はクローゼットの約半分に収まってしまう量だということがわかり、残り半分をご主人の趣味のスペースに改造することにしました。狭くても自分だけの空間はうれしいものです。
いざ夢が叶うとなると、ご主人は趣味のアイテムの要・不要も選別できるようになり、どんどん持ちモノが整理されていきました。「完成形のイメージが描けると片付けが楽しくなる」の好例です。
寝室を占拠していた「着る」「寝る」以外のモノも、本来の用途にふさわしい場所へと収めることができました。
ここまで私が手がけた美的収納の改造例を見てきましたが、いかがでしたか?
先にあげた5つのステップを実践するとグッとモノが減り、それまで使っていた収納用品のほとんどが廃棄処分の道をたどります。額にして平均で2万~4万円分もの収納用品が不用になるのです。
もちろん、美的収納のメソッドはマイホームを新築する場合にも大いに活用できるワザです。ここでは、新たに家づくりをするときに役立つ収納計画を伝授します。
まず前提として、「7つの分類」と「5つのステップ」を今日からでも始めましょう。分類、把握、処分をすることで持ち物を減らし、あらかじめスリムにしておくことは欠かせません。その上で家づくり、間取りづくりに取りかかれば、モノの種類と量に適した収納が確保できます。
収納計画を考えるにあたり、カギとなることは3つあります。①暮らしの動線、②収納の容量、③収納の構造です。
中でも一番大事なのは①の動線。②と③は次点で、どちらも同じくらいの重要度です。
動線から考える収納とは、どういうことだと思いますか? それは収納の位置や配置です。「本当にここでいい?」「こちら向きでOK?」などを検討します。それには、自分で描いた間取り図や、あるいは住宅会社が起こした間取り図などに、朝起きてから夜寝るまでの実際の動線を描き込んでみるのが一番です。
ライフスタイルや家事手順は人によっていろいろ。朝起きて、まず着替えをしてから顔を洗い、朝食の支度に取りかかる奥様と、シャワーを浴びてから物事を始める奥様とでは、おのずと動線は異なります。
だとすると、着替えが寝室にあると都合がいいパターンや、洗面室に置いてあった方が便利なパターンなど、「何をどこに」収納するかの考え方もまったく変わってきますよね。
ぜひ間取り図上で、一日の行動パターンを考えながら動線のシミュレーションをしてみてください。動線があまりにも行きつ戻りつするようなら、どこか収納の配置に無駄があるということになります。
②の容量は文字通り。「我が家にはこれだけの量のモノがあるけれど、間取り図にある収納は果たして適切な大きさか」を検討します。
そして③の収納の構造。これは棚の数、棚が可動式かどうか、奥行きの深さ、開口部分の幅や扉の付き方などのことです。たとえば化粧品を収納するスペースなら、たくさん収納できたとしても深すぎては取り出しにくいですし、寝具を収めるスペースが可動式なのはあまり意味がありません。そういったことを検討するのが③です。
動線をベースに間取りや収納の位置を検討するときに、もっとも気にかけてほしいのは「洗濯動線」です。
食事の支度ならば、ほとんどの動線がキッチンとダイニング回りで収まるでしょうし、掃除に関しては、そもそもあちこちを動き回る作業ですから、むしろコンセントの位置や、恐らく一番掃除をすることになるリビングダイニング近くに掃除機をしまう場所を確保することだけ気をつけておけば、それほど動線に神経質になる必要はありません。
でも、洗濯動線だけは別。大いに効率と関係してきます。なぜなら、洗濯動線が家事にまつわるいろいろな動線の中で、いちばん長くて複雑だからです。
ちょっと想像してみましょう。洗濯動線はスタート地点からして、各家庭で違います。各部屋から汚れ物を集めてくるところからスタートする奥様もいれば、洗濯機そばの洗濯カゴを手に取れば済む奥様もいる…といったようにいろいろ。洗濯の準備をし、洗濯機を回し終えたら、干す場所はどこでしょう。
庭? 2階ベランダ? サンルーム? そして夕方には乾いた衣服をどこでたたみ、どのようにしまいますか? 各部屋のタンスに奥様がすべてしまうケースもあれば、子供たちに「各自で部屋に持って行きなさい」というケースもあり、教育・しつけの側面も関係してきます。
要するに、世界で二つと同じものがないのが洗濯動線。マイホームの間取りが家事に適したものかどうかを判断できるのは、あなただけなのです。間取り図に動線を描き込んで検討するにあたっては、特に洗濯動線に注意し、できるだけ動線をシンプルにするような収納と間取りを考えるのがおすすめです。
最後に、子育て世代に「これは便利!」という提案をしましょう。それは、家族全員分の衣服が収納できるクローゼットを1階(もしくは洗濯機を置くスペースと同フロア)に設けるということ。
ちょっと大胆なプランかもしれませんが、家事と収納の効率という点からとてもおすすめです。帰宅して部屋着に着替えたら、汚れた衣服を洗濯カゴにポイ!入浴のときも1階ですべてが完結します。汚れ物を集める手間も、乾いた洗濯物をしまう手間も一度に済むのでとても効率がいいのです。
スペースの都合上そこまでは…という場合は、洗面室に替えの下着とパジャマを全員分しまえるような収納を設けることだけでも検討してみてください。各部屋に着替えを取りにいく手間が省け、とてもラクになりますよ。