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家の性能が低いことで世界でも有名な日本

日本の家が「紙と木でできた家」と世界中からからかわれたのは、そう遠い昔の話ではありません。最新の住宅でこそ、気密性と断熱性に富み「すきま風だらけでスースー寒い」…などということもありませんが、まだまだ「高性能」とは呼べない家が多いのが日本の現状です。

 

空調機器をいくら省エネ性能の高いものに換えても、家のつくりが追いついていなければ無用の長物と化してしまいます。せっせと空調を使って家を暖めたり冷やしたりしても、その端から暖気や冷気が外に漏れ出してしまっているー性能の良くない家というのはそういうこと。エネルギー効率のいい空調機器と、住空間をすっぽり・しっかりと包み込む家、その両方がそろって初めて、本当の「省エネ」な暮らしが手に入ります。

 

高性能な家、省エネの家とは、簡単にまとめると高気密・高断熱の家です。これもまた、どちらか一方ではダメ。せっかく断熱材をたっぷり入れた家をつくっても、気密性が悪ければ、それは頭から布団をすっぽりかぶっていながら、布団の端がめくれ上がっているような状態です。

 

冒頭で、日本でも最新の家は気密性と断熱性に富んでいるように述べましたが、実は日本の家の省エネ性能は、世界と比べるとまだまだ遅れをとっていると言われています。家電製品や自動車の省エネ性能は世界でもトップレベルだというのに、残念な話ではないでしょうか。

 

たとえばフランスと日本では、冬に暖房が必要なほど寒い日は同程度(日数)ありますが、家の断熱性能の差は1・4倍。日本の家のほうが1・4倍も無駄に熱を逃がしてしまっています。アメリカ、イギリス、ドイツ、デンマークなどと比べても軒並み日本が下。しかも各国は断熱基準が義務化されているのに対して、日本はあくまで「努力目標」に過ぎず、差は開くばかりです。

厚着をしてストーブの前に座って…が、昔ながらの日本の冬の過ごし方。活動量が落ちるので、不健康にもつながります。

日本は我慢大国!?辛抱してもいいことはない

加えて、囲炉裏や火鉢で細々と暖をとっていた時代の名残か、生来のつつましやかな性質ゆえか、日本人が暖房に使うエネルギーはごく控えめです。全館暖房が当たり前の欧米と比べて、4分の1、5分の1程度しか暖房にエネルギーを割いていないという調査結果も出ています。言うなれば「我慢」で寒さをしのいでいる国民だということです。

 

これは笑いごとではありません。というのも、日本におけるヒートショックが原因の死亡率は、世界と比べ群を抜いて高いという事実があります。死亡者数は交通事故死の約4倍の年間1万7千人! これは高気密・高断熱の家を建て、効率良く、そして家中をむらなく暖められるようにすれば防ぐことが可能になります。

もちろん、日本政府も無策だったわけではありません。オイルショック直後の昭和55年に住宅の省エネ基準を初めて制定し、その後も平成4年、平成11年とレベルアップを図り、ついに平成25年には大幅な改正も行いました。

 

この通称「H25改正省エネ基準」で、ようやく日本も高性能な家を「義務化」することに。3年後の2020年以降、改正基準を満たさない「省エネでない家」は建てられないことになります。

冬の暖房時に熱が逃げ出す割合

夏の冷房時に熱が侵入する割合

きっちりと建っているように見えても、壁や床、屋根などいろいろなところから熱が出入りしていることがわかります。どんなに室内を暖めても冬場は熱を奪われ、反対に夏場は、どんなに室内を冷やしても熱は侵入してきます。

 

しかも、これが昔の「木と紙の家」ならともかく、平成11年時の省エネ基準を満たしていてさえこうなのです。いかに高気密・高断熱が大切かがわかります。

 

中でも、開口部(主に窓)が圧倒的に熱の出入りの原因となっていることに気づきます。この数値は、窓を開け放したときではなく、窓を閉め切っているときのものです。日本では長いこと、この窓の断熱性能の遅れが著しいものでしたが、ようやく国際基準に近づかなければ…という気運になってきました。

 

ちなみに、高断熱は言うなれば厚い上着を着ること、そして高気密は、上着を着た効果をより高めるためにファスナーを閉めたり、首回りをマフラーできっちり巻いたりするようなものです。

断熱性を良くすると、冷暖房の効きはこんなに良くなる

下のイラストは、断熱性能の低い家と高い家で、エアコン暖房をつけたときの部屋の温度分布を示したもの。壁側からと窓側からの透視図と考えてください。断熱性能の低い部屋=平成4年の断熱基準の部屋は、エアコンを最大限つけても(2053Wのエネルギーを使い、吹き出し口の温度は36.6℃)でも室温にムラがあり、熱が逃げ出している様子がわかります。窓に至っては、濃い青色をしています。

 

対して、将来国が標準化を目指しているHEAT20 G2という高断熱性能を施した部屋は室温にムラが少なく、窓もトリプルサッシ等で対策しているため、熱の逃げが少なくなっています。こちらは使用熱量はたったの615W、吹き出し口の温度は29.6℃。かなりの省エネですよね。

断熱性能の差によつ暖まり方の違い

省エネ住宅は、家計面ばかりか家と人の健康にも◎

省エネな高性能の家を建てると、どんな「いいこと」があるのでしょうか? まず第一には、「冷暖房費が減らせる・CO2の排出量が削減できる」ということ。建物の断熱性と気密性を高くすると、熱の逃げや侵入を抑えることができるからです。下のグラフを見てみましょう。

省エネ基準ごとの年間冷暖房エネルギー消費量の比較

昭和55年に初めて制定された省エネ基準によって住宅を断熱した場合でも、まったく断熱をしていない住宅に比べると、およそ30%の省エネになっています。さらに基準が強化された平成11年型の断熱性能の住宅なら、約55%の省エネーつまり、冷暖房効率は半分以下に改善されているのです。年間の冷暖房費に換算すると4万円近く。大きな節約になります。

 

また、「特に暖房していない部屋でも寒くない」というのも、高性能な家のメリット。冬の寒冷地では、家中をいつも暖めておく全館連続暖房が一般的ですが、温暖地では、人の居る空間を必要なだけ暖める部分間欠暖房にしていることのほうが多いでしょう。

 

断熱性の低い家で部分間欠暖房をしていると、トイレや浴室、脱衣室などは寒いまま。先程も述べたようにヒートショックが起こりやすくなります。ですが、高性能な家なら、暖房空間と非暖房空間との温度差がグッと小さくなるため、体への負担を減らせます。

 

3つめのメリットは、「結露が抑えられる」こと。断熱性能の低い家で暖房すると、室内の水蒸気が冷えた壁や窓に触れて水滴になる「結露」が起こります。これが何度もくり返し発生すると、カビが生え、そのカビをエサとするダニも繁殖することに…。それだけでも問題ですが、さらに、カビの胞子やダニの死骸で室内の空気が汚染されると、「シックハウス症候群」の原因にもなってしまいます。

 

その点、住宅の断熱性能を高くすれば、建物の内側の温度が全体に上がるため、結露が発生しにくくなり、カビやダニの心配も減らすことができます。もちろん、人間の健康だけでなく、建材を腐らせることも防止できるので、家の健康にも大きな助けとなります。

「省エネの家」で冷暖房の概念が変わる…!?

性能の良くない家では、このようにたくさんの機器やエネルギーを使って居室ごとに冷暖房をするほかはありません。でなければ、あとは我慢や忍耐の世界。冷暖房をしていない空間とは激しい温度差が生まれ、ヒートショックの引き金にもなりかねません。

非常に高性能な理想の家が建つ時代になれば、エアコン1台で家中をまかなうことも可能かもしれません。これは「夢物語」ではありません。国は「ゼロ・エネルギー住宅」(家と設備の省エネ+再生可能エネルギーの活用で、エネルギー消費量が足し引きゼロになる住宅)の将来的な普及を目指しています。

高性能な家をつくる3つのポイント

最後にいよいよ、高性能住宅の具体的な内容です。先にも書いたように、2020年には一定の省エネ性を備えた高性能な家を建てることが義務化されます。要件や技術的なことは住宅会社に任せて構いませんが、ざっくりとした概要だけでも知っておいて損はないでしょう。

 

高性能な家を建てるには、以下が重要なポイントになります。①建物の断熱・気密、②窓の断熱、③住まいの遮熱の3つです。

①しっかりと建物を「断熱・気密」

省エネ住宅の基本は、外気に接している部分(床・外壁・天井または屋根)を断熱材ですっぽりと包み込むことです。そのイメージを表したものが、下のイラスト。すきま風や外気が入ってくる余地をなるべく少なくして、気密性を高めることも大切です。高い断熱性と気密性を実現して、室内外をきちんと隔てる施工をするということですね。

 

ここでは詳細は割愛しますが、住宅の断熱工法には大きく分けて「充填断熱」と「外張り断熱」があります。「充填断熱」は、柱や梁など家の構造体の間を埋めるように断熱材を充填する工法です。対して「外張り断熱」は、構造体の外側をまるごと断熱材でくるむ工法。

 

どちらもメリット・デメリットがあり、材料にも向き・不向きがあります。居住地域などによって満たさなければならない断熱レベルも異なりますので、住宅会社とよく相談の上、予算と照らし合わせながら工法と材料を選ぶようにしましょう。

 

また、家の気密性を高めるということは、気をつけないと人の呼吸や調理などで汚れた空気も逃げ出せないことになります。そのため、システムを整えて換気を計画的に行うこともまた大事なポイントになってきます。

②大きな効果を生む「窓の断熱」

窓などの開口部からの大きな熱の逃げ、侵入を防ぐためには、窓の断熱性能を上げることも欠かせません。窓の断熱性能は、ガラスとサッシ部分の組み合わせによって決まります。サッシを木や樹脂などの熱を伝えにくい素材にした上で、ペアガラスやトリプルガラスにすると大きな効果があります。寒冷地などでは二重窓も有効です。

③そもそもの熱を遮る「遮熱」

最後は遮熱。高性能の家でも弱点があります。それは、一旦室内に熱を取り込んでしまうと、逆に外に排出するのが難しいということ。そのため特に夏は、直射日光による熱を室内に入れない工夫をするとベターです。それが遮熱。

 

遮熱材や遮熱型の窓など、建材で対策を打つ方法もありますが、それ以外に昔からの知恵も負けずに有効です。窓の外によしずを垂らしたり、南面に落葉樹(針葉樹だと冬の日射も遮ってしまうため)を植えたりすることで、夏の陽射しをできるだけシャットアウトしましょう。

基本は「断熱構造で家全体を包み込む」こと

イラストの赤色のところが、断熱構造にするべき部分。2階の屋根裏を日常的に使いたい場合は、図の箇所でなく屋根の直下を断熱すること。大切なのは、室内外をくっきり断熱材で隔てることです。